高木さん(仮名)よりご連絡を頂いたのは2014年2月15日のこと。オハイオ便利帳を見てのお問い合わせでした。
初めてメールさせて頂きます。
昨年3月末にコロンバスに引っ越して来て、現在タウンハウスを賃借しています。
タウンハウス(コンド)を購入した方が良いかと考えていますが、USでの購入経験が有りませんので、購入費用の他、税金等ランニングコストがどれくらい必要かなど、教えて頂けませんでしょうか。
現住所は、000 ABC Road, Columbus OH 43230です。
この辺りが通勤・買い物にも便利なので、この辺りで探したいと考えています。
2ベッドか3ベットで、ベースメントが有れば良いと思っています。
物件の購入には
【クロージング時に】
1)諸経費がローンを組む場合は、通常2,500-3,000ドル程度、キャッシュで購入する場合は購入代金と1,000ドル以下のの諸経費。
A)(ローンを組む為に掛かる)銀行にローンを組む事で発生する費用、①銀行への手数料が借入額の通常約1%、②査定士への査定費約300-400ドル、③信用調査会社へのクレジットチェック料約35ドル、④洪水の発生する地帯かどうかの確認手数料、⑤コンド等で管理組合がある場合は、管理費その他の運営状況を確認する為の費用約75ドル。
B)(ローンを組む為に掛かる)ローンの支払の中から積み立てられ、ローン口座から支払が行われる①家の保険と②固定資産税の数ヶ月分の積み立て分。(これはクロージングがいつなのかによって変動します。)
C)(ローンを組む為に掛かる)登記には保険が掛けられますが、銀行でローンを組む事に対して余計に掛かる分の保険料は、買手負担。
D)郡に支払う登記料。
E)管理組合がある場合は、管理組合に支払う管理費の1ヶ月分の支払
2)頭金が購入金額の3.5-20%
3)私が頂く仲介料1%。
【家のインスペクションを頼んだ時に】
インスペクション(家の検査)代300-400ドル、シロアリ検査を入れる場合は50-100ドル
【オファーが受理され契約に入った時に】
手付金、通常1,000ドル程度(物件の額によって前後します。)
が必要となります。
オハイオ州の場合は、前年度の固定資産税を半額ずつを1月と7月に支払います。従って物件購入時は、その年の1月1日からクロージングの日までの固定資産税は売手の支払範囲となり、日割り計算額がクロージングの時に「クレジット」として、買手に前払いされます。ですので、
【クロージング時に銀行のキャッシャーズチェックで持ち寄る費用】
は、上記の1)-3)を合計した金額から「クレジット」の税額と手付金を差引いた額となります。
その後のランニングコストは、
【ローンを組む場合】
ローンの元金、利息、固定資産税と家の保険(Home Owner’s Insurance)を合わせたものが月々の支払に換算されて、毎月のローン支払額が決まります。クロージングがあった翌々月の1日から支払が始ります。固定資産税と家の保険は、銀行が積み立てをして支払時期になると支払をしてくれます。よって毎月のローンの支払いだけをして置けば言い訳です。(注:初年度の家の保険の支払は銀行によって取扱いが違います。クロージング時に初年度の支払を精算したり、クロージンを迎える前に保険料だけは先に保険会社に支払うこともあります。積み立てになるのは基本2年目からとお考え頂くといいと思います。)
【キャッシュで購入の場合】
1月と7月に前年度の固定資産税の半額ずつの支払、家の保険の支払が年に一度発生。
【管理費】
更にコンドミニアムには、管理費用が毎月掛かります。コンドミニアムによって価格は異なるので、(自動検索結果の物件詳細のところの)Condo/Assoc Feeという欄で費用を確認して下さい。
【住宅補修費用】
コンドミニアムの場合は、建物外回り(窓ガラス除く)や共有スペースの補修は管理組合持ち。それ以外の補修は自費となります。大きなものとしては給湯器や冷暖房機(セントラルヒーティング)が壊れると数千ドル単位の出費となります。一度に大きな出費を防ぎたい場合は、ホームワランティというものに入っておくと年間500-600ドルで壊れた時の修理や修理不能の場合は新品と取り替えてくれるサービスに入ることも出来ます。(2014年2月現在)購入の際には、売手がクロージング後1年間のホームワランティの費用を負担するのがコロンバス地域では一般的になっています。
2ベッドか3ベッドということですが、一般的に3ベッドの方が後々売る時には売り易いです。
とお返事をして面談の日程を決めました。5日後奥様と一緒にオフィスに見えた高木さん。現在支払っている家賃が実質「捨て金」になっていること。いずれか売却することになった時に「売り易い」物件を購入されたいご希望をお伺いしました。43230の郵便番号にはコロンバス学区、ガハナ学区、ニューアルバニー学区が混在しています。学校のグレードはこちらのサイトでお調べになることをお勧めしますが、学齢のお子さんがいる家族によっては学区は気になるところですが、2ベッドの物件をファミリー世帯が選ぶかどうかは微妙なところ。固定資産税が安いということで、学齢のお子さんがいない世帯にはコロンバス学区が人気であったりする訳です。と説明させて頂いた後、専属専任契約を頂き、郵便番号43230で、2-3ベッド、2.5バス頂いたご予算内で売りに出ているコンドミニアムの売物件の検索を掛けました。
この間に銀行からのPre-approval(アメリカでは物件を見に行く前に、銀行からいくらまでのローンが下りますよ、というPre-Approvalをもらうことが必要になります。ローンが下りない額の物件を見に行かなくて済む手間も省けますね。)をもらって、2月24日3つのコンドミニアムに下見に出掛けました。ニューアルバニー学区の2ベッドのコンドを2軒。コロンバス学区の3ベッドのコンドを1軒。コロンバス学区の物件は、価格的に当初の予定を超えているということで悩まれましたが、他の2軒に比べて明らかにグレードの高い物件。下見の時間が切れ、売手の現在のオーナーさんが戻って来るほどかなり悩んで話し込みました。私のプロとしての所見は、高額所得の夫婦がお子さんが学齢に達するまでが好んで住むこの最後の物件が一番値上がりは見込めるのと、自分で「やはりここに住みたい」と思う物件を選ぶのがいいですよとアドバイスすると…高木さんも奥様も「このコンドだったら是非住みたいです。」ということになり、その晩オファーを出す事を決めました。
もちろん、オファーを提出する前に事前調査。「飛んで火に入る夏の虫」(ごめんなさい!)で下見の現場に戻られた売手さんにも色々質問。「どうして売りたいのか?」、「いつ頃には決着を付けてしまいたいのか?」、「3月の最後の週末前までに引越は可能か?」、「今までオファーは入って来たのか?」、「今オファーは入っているのか?」、「最近下見に来た人は何人?その中でオファーを出すかもと言っている人は?」etc…もちろん、その後電話で売手の仲介士にも同じような質問をぶつけました。
注:オハイオ州では売手、買手それぞれの立場で仲介士を立てることが出来ます。私は買手である高木さんの仲介士ですから、高木さんの交渉に有利になるような素材集めをしている訳です。お家を売ろうと思っている人、下見が行われている間は家には近づかないことをお勧めします。もし遭遇しても買手の仲介士から受ける質問には「自分の仲介士を通して聞いてくれ」と回答するのが無難です。あ、これはここだけの話にしておいて下さいね(笑
このコンドのあるサブディビジョンの過去6ヶ月の市況を調べると、大きさ・部屋数・内装状況ともに同等物件がこの物件の提示価格より$100高い値段でクロージングしている実績がありました。となると、提示価格はぴったりの市況価格。物件不足の中、反対にこの価格で売りに出てから25日経つまで売れなかったことの方が不思議な位であることを説明しました。とは言え「やはり少しでも安く買いたいです。」という訳で、売手と売手の仲介士への調査によると現在入ってるオファーはなし、今晩中にはオファーが入るような下見もなしだったので、もう一つ前に売れた約$6500低い実績価格のオファーを出す事にしました。そして売手に1年間のホームワランティ(2014年現在、コロンバス近郊ではよほどの格安物件でない限りこれが通常です。)、今住むアパートの賃貸契約の切れる3月末前の週末に引越を考えその前の水曜日3月26日にクロージングと引渡(これは売手が大丈夫と現場で言っていましたから)、コンドの約款に買手に不都合な内容があった場合は契約を破棄に出来る条件を入れてオファーを提出しました(この最後の条件はコンドを購入するときは通常必ず入れます)。通常の①銀行の物件査定額が契約額と同等か上であること、②銀行のローンが下りる事、③家の検査の結果不具合の修復の責任負担が売手買手で同意することの3つの条件ももちろん入っています。但し、下見はちょくちょくあるようだったので、オファーの期限を翌日の午前10時までと短く設定しました。
注:不動産のオファー、カウンターオファーは何月何日何時までという有効期限付き。その期限が切れれば、そのオファーも無効になります。通常オファーは相手の都合も考えて、24時間程度有効期限を設けるのが一般的です。でも、それにこだわって”買いそびれたら”悔しいですよね。そこで、他にもオファーが入りそうな時は、相手側には「ごめんなさいね!」という態度を示しながら、この物件を購入することを真剣に考えているのでという言い訳をしながら、期限の短いオファーを出しましょう。といっても直接売手と交渉する訳ではないので、お願いしている仲介士にそのように行動するようにお願いして下さい。
予想した通り(ごめんなさい!)オファー価格より$4000程高いカウンターオファーが翌日入りました。このカウンターオファーを高木さんにお届けすると、「今からクロージングコストをお願いすることは出来ませんか?」とメールが入ったので、この時点でクロージングコストを交渉する危険性についてお返事させてもらいました。売手は提示価格が市場適正価格であることを分かってこの価格を付けていると思われる事。このカウンターオファーの時点で市場価格より約$2,500安いこと。そこで更にクロージングコストをお願いする=売手にとってはクロージングコストを負担するのも契約価格を下げるのもクロージングの際の手取り分が減る訳で同じこと。それでも遭えてぎりぎりまで交渉を繰り返すことも出来なくはありませんが、高木さんの置かれた状況を考えると得策とは言えません。理由は、この後、修理の交渉があり、引越の時にどんな状態で出て行ってもらうかは、正直売手次第です。交渉の上、安く買えた物件は引っ越した後にきずが多く見受けられたり、嫌がらせで壁をわざと汚くして行った様子とか伺えるんです。結果、壁を塗り直したらクロージング費用の負担としてお願いする2000ドルなんてお金はすっとなくなって消えてしまいます。でもこれは市場査定価格には反映しないですよね?これが投資物件で最初から、内装を全部入れることが前提の物件だったら交渉進めましょうとアドバイスするかも知れません。でもこれは自宅です。気持ちよくこのままの状態で入居出来る方が結果同じお金なのであれば、いいと思います。と説明させて頂くと「それでは、洗濯機と乾燥機を置いて行ってもらうというのは?」とお返事が来たので、「それはありです。」とお答えし、これを書面にしてカウンターオファーにすると、それに回答を貰っている間にほかのオファーが入るとよくないので、売手の仲介士に電話で確認、OKの返事。2月26日、無事に売手からのカウンターオファー額で契約に入りました。売手の仲介士からの後日談ですが、この日の夕方に満額で別の買手からオファーが入って来たようで、ここで高木さんの言う通りクロージングコストのカウンターオファーを返していたら、この契約は別の方に行っていました。コンドにあった洗濯機と乾燥機はまだ新しくかなり立派なものだったので、クロージングコストとほぼとんとん。高木さんもその結果に満足のようでした。
ここからクロージングまでちょうど30日、購入側は忙しくなります。気を引き詰めて行きましょう。
まず手付金を仲介士に渡す、それから家のインスペクション(検査)の依頼。詳しくはこちらをご覧下さい。この物件はリロケーション物件。売手が勤め先の都合で引越をする為に、その企業がリロケーション会社と契約をしていて通常の売買とは形態が少し異なります。契約に入るところまでは売手との直接のやり取りですが、リロケーションの会社がこの物件の事実上のオーナーとして契約先になるのです。既にリロケーション会社が入れた家の検査レポートがありました。更に自費で家の検査を入れることも出来ますが、高木さんはこの検査レポートを元に3月4日Request to Remedy(修理の依頼)を売手に入れました。
手に入れたコンドミニアムの約款と照らし合わせながら出て来た14箇所の修復希望を、売手直接のものと、コンドの管理会社への修復依頼とに分けて提出。外の木製のデッキのクリーニングと塗り直しはまだまだ凍結が続くこの時期には無理との理由で却下。それ以外は全て対応するとの回答が翌々日6日に来ました。高木さんも合意で、条件の1つの修理の交渉成立。ここで銀行から査定が送られます。
この間も買手である高木さんにはローンを下ろしてもらう為に銀行への提出書類が沢山あります。収入、負債、資産、その他の4つの項目に対しての証拠文書や銀行取引明細など数多くの書類の提出が求められます。通常は仲介士はこのやり取りには関わりませんが、日本と商習慣が違う事、言葉の壁等の理由でお手伝いさせて頂く部分も出て来ます。詳しくは銀行への提出書類のリンクをご覧下さい。
3月18日査定結果が戻り、2つめの条件である査定額が契約額と同等かそれ以上であることをクリア。最後高木さんの方に銀行から求められている書類の提出が終了し、3つめの条件であるローンがおりるをクリアすると無事クロージング。今回はリロケーションの会社が絡んでいる為に、クロージングの48時間前にHUD-1と呼ばれる不動産売買、登記に関わるSettlement Statement(精算/計算報告書)が銀行より提出される必要があります。ここで少し躓きがありました。頭金の支払に高木さんは日本の銀行口座にあるお金をこちらの銀行に送金して利用しました。ただ、送金が本人名義の口座間でのやり取りではなく、日本にいる息子さんが高木さん名義の口座から預金を引き出し、コロンバスの高木さんの銀行口座に送金したことで、頭金が高木さんの自身の資金であるという証明が途絶えてしまった訳です。クロージングが26日(水)、提出期限が24日(火)このやりとりをしていたのが21日(金);汗。たまたま、息子さんだったので姓が同じということで、息子からの「ギフトマネー」このお金を返済することは要求しません。という証書を日本の息子さんに署名してもらいながら、預金口座のある日本の銀行にも英語の預金証明書に印鑑を押してもらってこちらに月曜日の朝一番で返信してもらうことでなんとか対応。後日、高木さんのお話では日本にいる息子さんはこの銀行とのやり取りの為に1日お仕事にならなかったそうです。(お疲れさまでした..)
注:銀行は資産の欄に記入した銀行や株式の口座の過去2ヶ月分の明細を求めて来ます。上記のようなことを避ける為には、必要な資金がオンラインなどで第三者を通さずに自分の名義口座間でのやり取りが可能なことの確認、もしくは、物件購入の2ヶ月以上前に資金を現地の口座に移して置く様にしましょう。
なんとか必要書類が日本から整い、24日の期限にHUD-1の計算書も出ました。26日当初の予定通りクロージングの日を迎え、売手の仲介士から鍵やガレージドアオープナーを受け取り引渡となりました。あ、実はもう一難ありました… クロージング当日に持って来る金額はHUD-1に書かれていますが、この金額のキャッシャーズチェックを銀行で作って来て下さい。個人の当座預金のチェックではNGです!クロージングの会社から、高木さんの口座のある銀行支店がすぐそばだったので、チェックを当日作りに行って頂きました。高木さん、ご新居へのご入居おめでとうございます!
【高木さんからのコメント】